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2017年11月19日

Rosa Cuchillo〜ナイフのロサ〜 作品概要

ロサ・クチージョの物語

Rosa Cuchillo(ナイフのロサ)はペルーの現代作家オスカル・コルチャードが2009年に発表した同名の小説をもとに作られた作品で、ユヤチカニ劇団代表のミゲル・ルビオが演出したソロ・パフォーマンスです。作品の舞台は1980年~2000年の20年にわたったペルー内戦で、反政府組織センデーロ・ルミノソのテロ活動と、それを鎮静化しようとした警察特殊部隊や軍との衝突が続いた暴力の時代です。この時期多くの先住民が犠牲となり、未だ行方不明のままとなっています。先住民はセンデーロ・ルミノソからは彼らへの服従を拒否したことで命を奪われ、当局からはセンデーロ・ルミノソの一味とみなされて拷問・殺害されました。

 

先住民のロサの息子も捕らえられ行方不明となります。息子を探し求める中でロサは命を落とし、やがて死者の世界<下の国>へ辿り着きます。そこでは昔ロサが飼っていた犬のウワイラがお供になって神や精霊たちの世界<上の国>へと導き、彼女は息子のリボリオと再会を果たします。ロサは再び現生に戻り、人々が集う市場を巡りながら内戦で傷付き、恐怖から抜け切れていない人々のために清めの舞を踊ります。その儀式は人々のエネルギーを新たにし、彼らの運命、社会の現実を変えていきます。

 

ペルーの農村や山間部で暮らす先住民は多くの場合、社会の周縁に追いやられています。ユヤチカニ劇団は、こうした人々に光をあて、アンデス世界の神聖な儀式と西洋世界の演劇を融合した作品を創ってきました。劇団名「ユヤチカニ」(Yuyachkani)は、ケチュア語で「私は覚えている」を意味しますが、このRosa Cuchilloの作品にもペルー内戦を忘却の彼方へ追いやるのではなく語り継ぐことで未来を築いていこうという意思が込められています。

 

 

【クレジット】

演出:ミゲル・ルビオ

パフォーマンス/小道具/衣裳:アナ・コレーア

映像 ”Alma Viva”:リカルド・アラヤ (字幕:吉川恵美子、藤浪京)

音楽:マルエルチャ・プラード

​Alma Viva~魂は生きている 劇団ユヤチカニの記録

文化集団ユヤチカニについて

1971年にリマで創設。

Yuyachkani(ユヤチカニ)とはペルーの先住民族の言語であるケチュア語で「私は考えている」「私は覚えている」を意味する。特に民族・暴力といったペルーの社会課題をテーマとした作品を作り、政治的なパフォーマンスおよび集団創作の最前線で活動を続けている。ペルー内戦のような暴力の記憶を風化させず、その歴史を見直すことを重要だと考え、過去を見つめることで今生きている時代への考察を深めることができるとする。草の根に根差し、地域住民と一体となったパフォーマンスや、作品を通じたアドボカシー活動はラテンアメリカで「新しい民衆演劇」と呼ばれる中で最も重要なものとなっている。

ユヤチカニは2000年にペルー人権団体より人権賞(Premio Nacional de Derechos Humanos)を授与されたほか、2019年には演出家のミゲル・ルビオがペルー政府より文化賞を授与された。このほかラテンアメリカの国々で劇団、劇団員が数々の賞を受賞している。

 

【劇団員】

演出:ミゲル・ルビオ

俳優:テレサ・ラリ、アナ・コレーア、レベカ・ラリ、デボラ・コレーア、アウグスト・カサフランカ、フリアン・バルガス

 

【代表作】

1972年『銅の拳』Puño de cobre 

1978年『アルパ・ライク』Allpa Rayku 

1982年『路上の音楽家』Los músicos ambulantes

1989年『風に逆らって』Contraelviento

1990年『さらばアヤクーチョ』Adiós Ayacucho

2000年『アンティゴナ』Antígona

他多数。

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