Ventana al Teatro Latinoamericano
2022年7月 演劇情報
ボリビア:ラ・パス国際演劇FITAZフェスティバル2022が開催されました
1999年に創設され、2000年から隔年で開催されている演劇祭であるとの説明がFACEBOOKに記載されている。ボリビア国内のほかアルゼンチン、ブラジル、チリ、デンマーク、スペイン、フランス、メキシコ、スイスから演劇人・劇団が参加し国際色豊かに開催された。
ラインアップをいくつか紹介する。
ボリビア・スイスの集団〈Klara Theaterproduktionen〉による共同制作『パルマソラ』(Palmasola)はボリビア最大の刑務所パルマソラに取材して作られた異色の作品。
40ヘクタールの敷地をもつ刑務所には6000人の囚人が暮らしているとウィキペディアには書かれている。〈リハビリテーションセンター〉と銘打たれているので監房はなく、囚人たちはこの“街”でどうにか自力で寝床を探し、暮らしを成り立たせている。この“街”にスイス・ボリビアの混成チームが取材に入り、囚人や刑務官らの話を聴いて、囚人たちの生存戦略や無法地帯を支配する新たな”法”のかたちを見つけ出そうとした作品であると紹介されている。
デンマークの〈オディン・シアター〉Odin TeatretからはEugenio BarbaとJulia Varleyが参加した。南米の新しい演劇はOdin Teatretの身体論や演劇観から多くを学んできた。Barbaは数年前に自らの活動を縮小すると宣言したが、コロナ下にあっても頻繁にラ米の演劇イベントに登場している。ラ・パスにはJuliaの代表作『アベ・マリア』(Ave María)を持ってきた。高下駄を履いて女性のエレガントな衣裳を身にまとった骸骨顔のMr Peanutが日常の所作をおこないながら、生と死のポエジーを紡ぎだす作品である。私は2010年に観る機会を得たが、50分のあいだ、もったいなくてまばたきさえできなかった記憶がある。
ファミリー向けの作品も上演された。サンタクルス市の劇団〈カブラ・テアトロ 〉Cabra Teatroは『バレンティナの旅』El viaje de Valentinaで、2019年にチキトス熱帯サバンナで起きた火事をテーマに生態系保護や環境保全の必要性を楽しみながら子どもに学んでもらう作品を上演した。
チリから参加した劇団〈空想する少女 Niña inaginaria〉は日本をモチーフにした『おじいさんの本』(El libro de Ojiisan)を上演した。「おじいさんの本」と題される本を見つけた子供たちは、そこに書かれているお話でごっこ遊びをする。そのなかで、友情の大切さなどいろいろ学ぶという内容。映像のリンクを貼っておくので時間があればご覧あれ。タイトルのOjiisanはどういう意味だろうと思いながら映像を見始めたがすぐにOjiisanは日本語なのだと分かる。遠いチリで作られた舞台に折り鶴が舞っている。
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コロンビア:Patricia Arizaがペトロ新左派政権の文化大臣に指名されました
Arizaは劇団「テアトロ・ラ・カンデラリア」の創始者のひとりです。同劇団の俳優・演出家・作家として1960年代に始まる新しいラ米演劇伝統を創りあげてきました。また、女性演劇の活動家としての活躍も広く知られています。社会変革への強い意思を持ったArizaがコロンビアの文化行政をどう変えていくのか、コロンビアがますます面白くなってきました。
Arizaは2008年に同劇団代表のSantiago Garciaとともに来日しました。
「テアトロ・ラ・カンデラリア」は1960年末以来、集団創作の技法を発展させながら、自分たちの物語を語る新しいラ米演劇を創りあげてきた。Arizaは劇団の活動に大きな役割を果たしてきただけでなく、1990年頃からは女性演劇運動にも力を注ぎ、ウェールズに拠点を置く女性演劇世界ネットワーク〈マグダレーナ・プロジェクト〉のコロンビア代表になった。ラテンアメリカを結ぶ女性演劇のキーパーソンとして、女性が自由に自分の女性性を表現できるパフォーマンス劇の意義を確立したばかりでなく、貧困や差別から自分の人権さえ認識する機会を持てなかった女性たちに演劇を通じて社会的覚醒を促した。
ボゴタ市ではArizaが率いるコロンビア演劇協会CCT主催の「オータナティブ演劇祭」や「平和のための女性演劇祭」をコンスタントに開催している。その強靭な意志力に敬服するばかりである。
「コロンビアのテアトロ・ラ・カンデラリアはすごいぞ!日本に呼びたい!」と思う人たちが集まり、2007年に「テアトロ・ラ・カンデラリア招請実行委員会」を東京で立ち上げた。劇団メンバーは10人を超えるのですぐには呼べない。まず第一段階として2008年11月にGarcíaとArizaの両氏を招いた。「日本演出者協会」の企画だった。残念ながら劇団を招請するという夢は叶わなかったが、その時の経験をまとめた記事を紹介する。
2008年の実行委員会の試みについては本ホームページの「アートイベント記録」に詳細を残すべく準備中である。
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Corporación Colombiana de Teatro
La dramaturga Patricia Ariza fue designada nueva ministra de Cultura
公演案内(東京):劇団劇団Raíces Teatroの公演があります
日西二言語パフォーマンス(詩・物語・音楽)をおこなっている劇団の公演です。今回は7/16(土)と7/17(日)の2回公演です。詳しくはこちらをご覧ください。
ペルー:ユヤチカニ劇団の50年の歴史を綴るウェブ動画が公開されました
UPC (Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas) が制作した動画です。タイトルは「ユヤチカニ:向かい風のなかで-ペルー演劇の50年」(Yuyachkani: Contraelviento - 50 años en la historia del teatro peruano)。年譜と劇団員へのインタビュー動画で構成されています。動画はこちら。
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